切っても切れないお寺と鐘の関係

夕暮れに響く鐘の音は、日本人の原風景として心にあります。また除夜(じょや)の鐘は、大晦日の日本の風物詩といってもいいでしょう。それほど、お寺と鐘は切っても切り離せない関係にあります。鐘は「梵鐘」ともいわれ、梵はサンスクリット語の「ブラフマン」の音写で、すべてのものの本質をなすと思われる原理を指し、仏教ではもっとも尊いものに「梵」をつけることがあります。梵鐘は、インド発祥の鐘、といった意味です。

鐘には「喚鐘(かんしょう)」というのがあり、「半鐘(はんしょう)」ともよばれ、ときを知らせるために打つ鐘のことです。つまり、いまのお寺にある鐘も、そもそもはときを知らせるためのものだったのです。インドのお寺では僧侶を集めるときに、木の板を鳴らしていました。それがインドから中国へ伝わると銅製になったようです。

中国では後周時代-ごしゅうじだい-(951~960)頃から鐘がさかんにつくられるようになり、日本へは仏教の伝来とともに朝鮮経由で入ってきました。なお、国産で最古の鐘は京都の妙心寺(みょうしんじ)にあり、文武(もんむ)二年(698)につくられたものです。その他、古い梵鐘には興福寺(727)、劔神社-つるぎじんじゃ-(福岡県丹生郡、770)、西光寺-さいこうじ-(福岡県福岡市、839)のものなどがあります。

— posted by 吉金 at 12:00 pm