「知ってるつもり」というのが一番怖いものなのです

浪費癖、無駄遣い、先送りというのは、お金の知識がないために生じる習慣ですが「お金が貯まらない原因」には、もっと性質の悪いものがあります。実際には、よく分かっていないにもかかわらず、自分では「知ってるつもり」になって、お金の問題を扱うというケースです。とある夫婦は「知ってるつもり」の典型でした。奥さんは、家庭の支出をすべて管理して「カリスマ主婦」を自負するほど、お金の問題を知っていると思い込んでいます。

専業主婦をしているAさんは、夫の給料振込みがあると、すぐさま2つの銀行口座へ移し変えてしまいます。片方の銀行口座は、住宅ローンと自動車ローンの引き落とし専用で、片方の銀行口座は、それ以外の引き落とし専用に使います。

余ったお金は、4つ目の銀行口座に入れておいて、他の口座のお金が足りなくなった際の補充用に使っています。それだけではありません。「Aさん流管理法」と称して、

  1. すべての支払いは、請求書の到着後見1時間以内に完了する
  2. 取引の項目ごとに、ノートを1冊ずつ用意する
  3. ノートへの記帳は、ノートごとにマーカーペンで色分けする
  4. 安全確保のために、請求書は別々のファイルホルダーで保存する
  5. ファイルホルダーには、正確に支出を記録して、請求書の支払日と支払金額を厳密に整理して記載する
  6. 最後に、アルファベット順に、机の引き出しにしまっておく

という手の懲りようです。こうして、1週間のうち10~15時間を支出管理にあてています。Aさんに言わせれば「近所の奥さん方のほとんどは、お金の管理が上手ではないが、私だけは違います。家族が何にいくら使ったのか、私は完璧に把握しています」ということです。

しかし「では、生命保険には、どれくらい加入していますか?」「お子さんの進学費用は、どのように準備していますか?」「住宅ローンの返済は、どうしていますか?」「年金保険料の控除はしていますか?」「定年退職後の生活費は、どのように準備していますか?」と尋ねた際のことですが、Aさんの答えは「そんなこと、どうでもいいでしょう!それより口座管理法を見てくださいな!」という返答だったのです。

要するに、週の10~15時間を「お金の管理」に時間をかけているとはいうものの「支出管理」だけを延々とやっているわけです。これではまるで、飼っている鶏の数を、毎日、何時間もかけて数えているようなもので、たくさんの卵を手にするためには、時間を使っていませんよね。

管理を卜-タルで考えないとお金は流出する

お金が貯まらないのは「お金の問題」に時間をかけていないからだと考える方が、たくさんいらっしゃいます。「四六時中、株式市場を眺めていれば、投資で儲けることができるだろうし、マネー雑誌や投資番組を観る時間があれば、お金が儲かるに決まっている。でも、忙しくて、そんな時間は取れないから、仕方がないんだ!」なんて具合でしょう。

しかし、以前アメリカで行われた「5,000人のお金持ちに対するアンケート」によれば、「お金の問題」には、月に2~3時間使っているだけという結果が出ていたそうです。しかも、この「月に2~3時間」の中には、請求書の支払いや銀行口座の管理も含まれているのです。つまり「お金の問題」に時間をかけないほうが、お金は貯まるということです。

反対に「お金が貯まらない」というのは、4つも5つも銀行口座やクレジットカードを持っていて、必要もないことに時間を割いているケースなのです。そして、こうしたケースに限って、肝心な点がすっかり抜け落ちてしまっています。たとえば、この夫妻の場合には、支出管理に関してだけは、パートタイムで働けるほどの時間を割いておきながら、生命保険、進学費用、住宅ローン、年金、定年退職後のことなんて、まったくお構いなしでした。年末調整の控除なんて、しょっちゅう忘れているのです。

どうでもよい記帳に数時間をかけているのは、単なる趣味にすぎません。そんなことよりも、生命保険で10万円、住宅ローンで100万円の税金控除を受けたほうが、お金ははるかに貯まります。お金の管理はトータルで考えないと、開いた穴から流失してしまいます「お金が貯まらない」というのであれば、お金の管理は、いろいろな面から考えましょう。

どこかだけを取り出して、偏ったやり方をしていてはうまくいきません。学校で教わる勉強は、時間をかけるほど成績は上がってくるものですし、数学だけや英語だけという形で1教科だけが得意でも、良い大学へ進学することは、十分に可能です。

しかし、お金の管理の場合には、月に2~3時間を目安にして、できるだけ時間をかけない工夫をすることが大切ですし、どこかに手抜きの箇所が残っていれば、そこから、すべてが流失してしまう恐れがあるということなのです。

家計管理は、全体を見渡す必要があります

「木を見て森を見ず」というのは、全体を見ずに一部だけを見て道に迷ってしまうということですが、家計管理で相談する専門家は、総合的にアドバイスできる人を選ぶべきなのです。お金の問題は、投資、保険、住宅、税務、法律、相続などに枝分かれしていますが、すべてを把握方はほとんどいらっしゃいませんから、専門家の力を借りる必要があります。ところが、金融の専門家というのもすべてを知っているとは限らないのです。

たとえば、保険の営業パーソンは、生命保険の種類を知っているでしょうが、保険に関する税金や相続問題に関しては十分に分かっていないかもしれません。証券マンは、自分の勧めた金融商品のことは知っているでしょうが、それを老後の生活費にどうやって活用すべきかはアドバイスしてくれません。税理士は、確定申告や年末調整の仕方をアドバイスしてくれますが、浮いたお金の運用の仕方までは教えてくれません。銀行は、住宅ローンを提供してくれますが、所得税の控除手続きや将来の修繕費については教えてくれないのです。

お金の問題に関して部分的に見てばかりいると、一つひとつは正しいように見えてきます。ところが、総合的に見れば失敗しているケースも多々見られるのです。個々のジャンルの専門家の意見を鵜呑みせずに、自分で総合的に判断するか、あるいは、総合的にアドバイスできる専門家に依頼することが重要です。

— posted by 吉金 at 04:53 pm